2010年05月28日

リーくん

 リーといえば、ジーンズ? あるいは、やっぱし、ブルース・リー?
 俺たちの世代。

 ある会社の会議室で、リーという男と会ったのは、あれは4月?
 青みがかったグレイのスーツに、10センチはありそうなひさしのリーゼントのリーさん。
 面接だったのか?
 緊張していた?
 青ざめた顔をしていた。

 Blue Lee、と思った。
 そのリーと、さいきん一緒に仕事をしている。

 ある朝、
「あれ? 今朝はリーが来ないな。
 逃げたのかな。まさか。
 それにしてもこの、ドラゴン模様のTシャツで坊主頭の、17歳くらいにしか見えないヤツ、
 なんだか俺の高校生時代に似ているボウズ、この若者は誰だろう?」
 とか思っていたら、それがリーだった。
posted by TAKAGISM at 03:00| Comment(0) | 雑感

ヤングくん

 山手線の中で、後輩のヤングくんと吊革を握っていたんだ。
 ヤングは中国のダーレン(大連)という港町出身、ナイスガイだ。

「なあヤング、ビール一杯につき、ひとつの北京語を教えてくんない?」
「いいですよ」
「ありがと。で、俺は今夜、1パイントのビールを、君に与えたよね」
「はいはい、ありがとうございました」
「まあな」
「だから、いい言葉を教えますよ」
「お!」
「いちばんいい言葉はですね、そうだな……《めいにゅ》」
「めいにゅ〜」
「いいえ。めいにゅ」
「めいにゅ」
「そうそうそう」
「めいにゅ」
「そうそうそう、うまいですね」
「めいにゅ」
「そうそうそう」

 よし。

「それを使うと、とてもイイですよ」と、ヤング。
「ありがとう、使ってみる!」

 北京のある会社に行って、ミーティングをした。
 グラフィックデザイナーという肩書きの、とても若い女性が二人、現れた。
 アニメーションのキャラクターについて、5分くらい話した。
(日本語が上手な、ハオという素敵なやつが、通訳をしてくれた)

 別れ際に、なんだか本能的に、ヤングの言葉が浮かび、
「88・めいにゅ」と言ってみた。
 デザイナー二人が、瞬時に、真っ赤になった。

 ヤングは、俺に何を教えたのか。
posted by TAKAGISM at 02:38| Comment(0) | 雑感

2009年08月16日

断層撮影

 自慢になるような話もためになるような話もひとつだってなく、とにかく恥ずかしい恥ずかしい三年間が、けっきょく自分の今の芯みたいなものになってるんだから、困ったものなんです。

 高校一年生に上がる直前に、団地の狭い風呂に、何故なんだかオヤジと一緒に入っていた。
「お父さん、あのさ……人の性格って、いつ決まるんだろう」
「……んー。高校生くらい、かな」
(そうか、高校生か!)
 ちなみに、僕の両親は、高校生時代に知り合って付き合って(どうやらその間に僕が発生して!)結婚した(ありがたいことだ! パパ、ママ! 俺が、いまここにいてあることを!)。

*つまらない追伸!
 僕が「発生」したのは、両親が十代の時ってことではない。
 ここんとこ、ちゃんと書いておかないと、父も当惑する!(当惑する歳でもないだろうけど!)

 胸膨らませて入学すると、ワルい奴やヘンな奴ばっかりだった。
《ライオンパイ》という三年生がいた。
 これは「ライ・オンパイ」と発音して欲しい。
 頭が、ライオンのたてがみのような茶色のアフロで、ライオン先輩――転じて、ライオンパイ。
 市内いや道内でも有数の進学校であった、我が札幌南高等学校にも、そういう人がいたんである。
 同級にも、カツイやらナオシやらミウやらアオタやら、悪いモノはいっぱいいたが、まず僕らはライオンパイに呼ばれ、上下のルールというのを説かれた。
 幸い、暴力は無かった。

 で、ライオンパイの一味に《タバコンパイ》というのがいた。
 これは「たばこ・んぱい」と発音して欲しい。
 僕らはちょっとしたお洒落モノを自負していたので、小遣いでもあると思われていたのだろうか。
 タバコンパイは、すーっと寄ってきては僕らの首に腕を回し、
「タバコ、くれ」と言うのだ。「なけりゃ、小銭でいいぞ」

 あの素敵な進学校!
 女の子達はみるみるうちに綺麗になってゆき、運動部に入った男達は、その肌の色を艶々に焼いていく、そんな一学期!
 僕らの周囲には、ライオンパイとタバコンパイだ。

 おお!(フランス文学風に、詠嘆してみてね!)

 僕らの学生アルバムを身近に持っていますか?
 なぜか、坊主頭のボーイズがいるでしょう。
 オーキンとかテシオとか。
 あれは、タバコンパイの呪いだ。

 学校と「風月」の間にあったゲーセンで狩られ、あるいは屋上から一段下りたあの東側の屋根で、狩られた。
 後者の場合は、素敵な話があるんだ。
「あなた?」と電話をしたのは、沖野先生の奥様。「今、二階の屋根の上で、煙を上げてる子たちがいるみたいよ」
 マッチョな体育の沖野先生のご自宅は、学校を一望できる場所にあった(同窓生には、説明無用だけどね)。
 沖野先生は、現場へ急行した。
 そこで紫煙を上げていたのはタモキンら一味だった。
 先生はおっしゃったと聞く。
「俺が発見したんなら許さないけどな。でも、これは一種の密告だと思う。だので、俺はおまえらを見逃す」
 ほんとかな……でも、そういう伝説が実在する。

 その頃、僕はナオシとつるんでいることが多かった。
 南十九条大橋の下に、哲学者めいたホームレスのおじさんがいて、僕らは昼休みと、そこから連続する午後のひとときを、そこで過ごしたもんだった。
 ナオシはずいぶん気前よく、おじさんに煙草をくれてやった。
 もっともナオシは現実的なやつで、帰り道には、
「さっき、ジジイに四本やったから、高木は二本返せ」と言うんだ。
 不平はなかった。

 ホームレスのおじさんは、自称詩人だったが、じっさいのところ、文学の知識がすごくあった。
「ヘッセを読むならね……『みずうみ』がいいよ」だとか「トーマス・マンの『魔の山』は、今しか読めないんだからね」などと、今考えてもまるで間違ってない、素敵な文学論を語ってくれたもんだ。

(今にして思うとだけど、おじさん、ドイツ文学に偏りすぎではないか?
 ゲーテをギョエテと呼び、
『そう呼ぶと、女の子に、モテるよ』とか言っていた。
 ――説明するのも無粋ですが、そういうことは、あり得ませんでした!!!――
 ってことは?
 僕が学園の中や外で、女の子に向かって、
「ギョエテのヴエルテルの悩みはね……」とか、言ってみたということでしょうか?!
 非常に気まずい!!!)

 ところで、これももはや時効どころではない過去のことになるから書くけど、グラウンドの端(旧正門)のそばにあったテニス部小屋は、煙草を吸うには最高の場所だった。
 隠れ家だからってわけじゃない。
 その木造の小さな建物には、材木の隙間や節穴がいくつかあって、扉を閉めると真っ暗なはずの室内に、何本ものレーザービームが差し込むのだ。
 ビームはその時間によって、白かったり赤みがかっていたり、その角度も違うのだが、晴れている限り、ばっちりと部屋の中に射し込んでいた。
 さてそこで、一服点ける。
 僕らはもっぱらセブンスター派だったが、これって煙がとても濃い。
 小屋に射し込む、平らだったり細い細い円筒状だったりする明かりの中に、煙草の煙が渦を巻く。
 モヤの断層撮影だ。
 ナオシが、
「あのジジイに、見せてやりたいな」と言い出した。
「あのじいさんなら、これが判るだろうな」と僕は言った。
 僕らはテニス部小屋を出て、じいさんの姿を求めて南十九条橋の下へ行った。
 オチを付けたいわけじゃないんだが、じいさんはいなかった。
 そして、その後二度と、そこに戻ってくることはなかった。
 僕らはそれから何度も、小屋に射し込む光と煙のスペクタクルにうっとりしたもんだった。
「ジジイ……損したよな」と、いつもナオシは言っていた。
「どこ行ったんだろうな」と、僕は言った。
「死んだんじゃねえ?」とナオシは言い「それにしても綺麗だよね」と、煙の断層撮影に目を細めた(細めていたと思う――ほんとは暗くて、よく見えなかった)。

このブログ風読み物はフィクションです。
実在の人物・団体・商品・店名などとは関係なく、
ストーリーも全て架空のものです。

posted by TAKAGISM at 17:29| Comment(4) | 雑感

2009年08月15日

巌流さんの話(その3)

 俺は一度札幌に戻り、見た限りのことを、ボスに報告した。
 けど、ニクいことがあった。
 俺と映子が千葉の病院を去り、上野で焼肉を食っているころ、ボスは、紐だらけで寝ているガンさんの寝姿を、見下ろしていたんだ。
 そして俺が翌日の15時ごろの飛行機で帰り、19時にボスの部屋で「報告」を行ったとき、ボスは俺より2時間以上早く、会社に戻っていた。
 かないっこない。

 映子はそれから、会社の仕事はこなしつつ、合間を見ては千葉へ通っていた。
(愛すべきガールフレンド、accoの地元の松戸だ)
「高木さん、今度はいつ来ます?」と映子が言うので、
「死にかけたときか、元気になりそうなときにでも」と答えると、映子はまた怒った。
「お見舞いって、そういうもんじゃないでしょう」と言うので、
「じゃあ、どういうもんだってんだよ」と、電話で口論した。

 2週間も放置したかもしれない。
 とにかく、松戸へまた、行くことにした。
 映子は今度はさすがに羽田空港までは来てくれず、東京駅で待ち合わせた。
「田舎くせえ川だの橋だの、よくもこんなに渡るもんだな」と憎まれ口を言ってやった。
 映子は何か口答えでもするかと思ったんだったが、なんだかウルウルしたような目で、電車の窓の外に目をやるばかりだった。

 ガンさんの部屋に、ガンさんはいなかった。
 映子は、きっとした顔になり、看護婦さんの詰所に向かおうとした。
 俺はそれを止めた。
「裏庭があるよな」
「あります。おおきくて、草がボウボウなんです」
「そこでまた、一服じゃないのかな」
「!」
 俺たちは病室を出て、裏庭に回った。
 そろそろセミも、弱りかけているような鳴き声で。
「セミも、おしまいに近い」と俺が言うと、映子は、
「縁起でもないこと! 高木さん、ほんとにそういうとこ、センス悪い!」と、また怒った。
 けれど、裏庭のうっそうとした遊歩道には、ガンさんどころか、年寄りの一人もいなく、残暑の、ムシムシした空気だけが、固まりのように滞っていた。
「ここにはいないな」と俺が言うと、映子も、
「絶対にいない。こんなところにあの人は居られない」と言った。
 映子が詰所の看護婦長さんに相談するというので、
「それだけはちょっと待てよ」と言った。
「どうしてですか?」
「いくつか理由はあるけど、まずは、病院に迷惑がかかるだろ」
「じゃあ、どうすんの?」
「あまりに暑いので、俺はアイスコーヒーを飲みたいんだ」
「飲んだら考えが出ます?」
「出る。出る。きっと出る」

 ドトールコーヒーショップだったと思うが、たよりないアイスコーヒーを飲んでからも、実のところ俺にはいいアイデアは浮かばなかった。
 映子は、
「夏はホットです」と言いながら、おそらくはあれも薄っぺらいコーヒーを飲んでいた。
「脱出しちゃったんでしょうか?」
「脱出?」と言いながら俺は、タバコが残り2本になってることが気がかりだった。
「ですから、巌流さんのことだから、病院を」
「かもしれないな」
「あのね? あの、どうして高木さんってそうして、なんでも放り出すの?」
 映子が言った台詞は、言い過ぎ。
 俺は仮にも彼女の上司であり、そのころはイケているクリエイターってことになっていたんだ。
 だから、少し、わざとらしく黙ってみた。
「ごめんなさい」
「おまいさんの『ごめん』は、インフレだな」
「?」
「やたらと出るけど、安目だな」
 どう通じたか判らないが、俺は意地悪くゆっくりと間を取ってタバコに火を点け、ほんとは胸が痛いんだけど、深々と煙を吸い込んで、吐いた。
 俺らがいたのは、ドトールの二階の窓辺の席だった。
 で、俺は見た。
 ロータリーとも言えないくらいの小さな駅前の、ちょうど向かいにある店――つまりはラーメン屋の暖簾の奥に、ちょっと異様な、白と水色の縦縞の服――もっと言うなら、それは、浴衣さ。
 胸の中で、なんだか金色っぽいドキドキが湧き起こった。
「見つけたよ」「何を?」「海に溶けていく太陽を」……というのは嘘。
「何を?」
「行こうぜ」
 映子は俺の顔を見て、手許を見て、知ったような顔で言った。
 そんなところも可愛いんだけど。
「タバコが切れたんでしょ」
 俺は答えず、トレーを片付けて、階段を下りた。
 映子は黙って着いてきた。
 信号もないような道を横切り、紺色の暖簾に向かった。
 映子はもはや、わめいたり苦情を言ったりはしなかった。
 暖簾をさっとのけると、半分だけ開いたガラス戸の奥から、
「いらっしゃいませ」と、律儀な声が聞こえ、きっと鶏ガラなんだろうと思われる、上品な香りがした。
 はっとした顔をしたのは、精悍な顔つきの店主だった。
 そこは素敵なラーメン屋さんだった。
 丸まった背中は、白地に青線の浴衣。
 2メートル近いスタンドにぶら下がった、黄色と透明の点滴。
 点滴スタンドをガラガラと引きずりながら病院を抜け出し、ガンさんは、当然のことながら禁忌とされていたラーメンを食いに、その店に来ていたわけだ。
 スープと麺にムチュウなのか、それとも知らんぷりなのか、ガンさんは背中を丸めたまま。
「おいしそうだね!」と俺は言った。
 決して怒鳴ってはいないさ。
 ガンさんは、案外とゆっくり、俺に振り返って、
「へへへ。よく見つけたな」と言った。
 俺と映子がどうしたか?
 ガンさんの隣に俺が、その隣に映子が座って、ラーメンを食った。
 加えて言う。
 ガンさんは、おかわりを食った。
「管やヒモがじゃまで、すげー、食いづらい!」と、何を罵っていたのだか。

 ラーメンは、夢心地にうまかった。
 勘定は、ガンさんが払った――というか、あらかじめ1万円ほどを預けていたそうだ。
「俺がそんだけ食う前に死んだら、釣りはいらねえから」って。
 でも、正直、店主はそんなシャレを喜んではいなかったもよう。

 共犯者。
 共犯者って、怖い言葉だね。

 で、ガンさんはその後どうしているかっていうと……仕事はほとんどリタリアして、ラーメンの評論家になっている。
 加えて言えば、評論家である自分に飽きたらず、店をやろうと思っているらしい。
 さらに加える……。
 知れば知るほど奥が深くて、
「こればっかりはさ、高木よ。資本だの、半端な修行で始められることじゃないぜ。ラーメンは、ビジネスなんかじゃないんだよ。恐ろしいほどの『道』さ」

 だので、巌流勝雄のページの、おいしそうなURLを載せておく。
 ただし、注意!
 小腹が減った夜には、読まない方がいいと思う。

 http://ameblo.jp/oomori/entry-10319195759.html

(おわり)

このブログ風読み物はフィクションです。
実在の人物・団体・商品・店名などとは関係なく、
ストーリーも全て架空のものです。

posted by TAKAGISM at 01:13| Comment(0) | 雑感

2009年08月14日

巌流さんの話(その2)

 俺と映子は、上野で飯を食うことにした。
 黄色い行灯に黒い文字で店名が書いてあるような焼肉屋(そういや、渋谷のババアもそうだ!)。
 なんだかシワいようなハラミとか、映子が好きだと言うサガリとか、そういう、安っぽい焼肉を炙りながら、俺はなんだか薄いマッコリを飲んでいた。
 映子は俺に先立って、一度、ガンさんを見舞っていたので、病状について詳しかった。
「心臓が、水を含んでいるんですよ」
「ん?」
「本来、元気に動く心臓の筋肉が、水で一杯になっちゃって、そうすると、なんていうんですか……」
「心室とか心房な」
「です。そこが狭くなって。ガンさんみたいなガタイのいい人に足りるだけの血液が送られなくなるんですって」
「何が悪いの?」
「知らない。あたし、お医者じゃないですもん」
 映子は俺が焼いてやる肉(俺は、たまにはそれでフラれるほどの焼肉奉行だ)をモリモリ食いながら、今付き合っている男の話を始めた。
 そのシームレスさったら素晴らしいもので、ルーターもどきのガンさんの話から、すーっと、米国に留学中の男の話になる。
「彼はMBAを獲るんです。もうじきなんですけどね」
 俺は、旅疲れと、映子のパンチやキック、そして薄いマッコリで少しいらついていたのかもしれない。
「MBAって別に、そんなたいした資格か?」と言ってしまった。
 映子は生グレープフルーツサワー(当時は、出たばかりだった!)をきゅーっと飲んでから、
「じゃあ、高木さんはMBAを持っているの?」と言った。
 黙っていると険悪になりそうなので、
「ないない。もちろんない」と言った。
 映子は、
「自分ができないことを言うって、男らしくない!」と言いながら、生グレープフルーツサワーのグラスを、テーブルに叩きつけた。
 それはほぼ、空だった。
「同じのにするか?」
「あたしはね……」と、映子は、質問には答えなかった。
 俺は指を立てて店の人を呼び、一方的に、生グレープフルーツサワーを頼んだ。
「あたしは、そんなの頼んでない!」と映子が少し声を荒げた。
「勘違いするな。俺のだ。フォー・ミーだ」と言った。
 そこで、話がどう繋がったのか、どうしても思い出せないし、無理に話を作ると不自然になるので、ありのままを書くことにする。
「あたしの、前の前の男って、ゾクだったんですよ」
「ゾクって、暴走族のゾクな」
「あー、そういう言い方、高木さんらしくて、あたし、すこし、ヤ! ゾクったら、ゾクでしょ!」
 なんだか怒ってる。
「まー、そう怒るなよ。おまえ、怒ってばかりじゃんか。んで?」
「じゃあ、ちょっと、落ち着いて言うけど……」
 そこからの映子の話は、俺にとっては面白かった。
 前の前の彼は、オートバイの曲乗りを極めようとしたそうだ。
 具体的には、シートの上に直立し、両手を左右に伸ばして、十字架のようになるものらしい。
「そんなアンバランスなもの、転ぶだろ!」
 言いながら俺は、腹筋がしびれていた。
 笑いというより、痙攣に近かった。
「ですよ。転びます。転ぶと、痛いです。ですからそれを転ばないように稽古するんです」
「何のために?」
「それは、あたしの言うことじゃないでしょ。バイクの上に立つってことが、彼の目標だったんですから」
「それとMBAが関係あるのかい」と言ったとき、俺は、映子には申し訳ないが、笑い転げていた。
 映子は、
「じゃあ高木さんは、走ってるオートバイの上に立てるの?!」と、怒気を含んだ声で言った。
「立てない」
「だったら、走ってるオートバイの上に立てる人のことを、とやかく言えないんじゃないですか!?」
 俺は二の句が継げず、網の上のサガリをひっくり返した。
 焼け頃だったので、映子の皿に、ちょっとわざとらしい優しさで、それを置いてやった。
「高木さん……焼肉焼いてくれるのは、上手ですよね。それと、お酒を頼んでくれるタイミングと……」

 MBAと、オートバイの上で十字架になることに較べると、焼肉を女の子に取り分けて上げることは、ひどくレベルが低い気がした。
 映子はそれを確信しているようだったが、特に憎たらしくはなかった。
 でも、俺がいつまでもクックと笑っているので、
「何かバカにしてます?!」と、これまた怒鳴られたものだった。

(つづく)
このブログ風読み物はフィクションです。
実在の人物・団体・商品・店名などとは関係なく、
ストーリーも全て架空のものです。

posted by TAKAGISM at 18:31| Comment(0) | 雑感

巌流さんの話(その1)

 巌流勝雄(がんりゅう・かつお)。
 身長179センチ(目測)。
 体重75キロ(目測)。
 ダブルのスーツを着ることが多く、髪はパンチパーマだ(天然らしいが、見事なパンチだ)。
 ひどい近眼らしいのだが、眼鏡はかけていない(家ではどうなのか知らない。外ではコンタクトレンズを使用しているのだろうと思われる)。
 元船乗りで、アイスホッケー選手(アマチュア)。
 ブラスバンドでトランペットを吹く(本当は、川べりで夜空に向かってソロを吹くのが好きらしい)。
 結婚歴は数度あるが、今は独身である。

 巌流さん(以降、慣れ親しんだ名前で『ガンさん』と呼ばせていただく)の身に異変が起こったのは、2000年の夏だったと記憶している。
 俺とガンさんは仕事上のパートナーだったのだが、俺らを繋ぐ役割だった映子から、ひどくうろたえた口調の電話が来た。
「ガンさんが……ガンさんが……」
 まるで要領を得ないので、落ち着かせるのに手間取った。
 どうやらガンさんが、通勤途中に急病になり、入院しているのだと言う。
「上の人らには連絡したのか?」
「まさか! 高木さんに最初に電話しています」

 俺はこうして映子がしばしば、ものの順序を間違えるところを、内心、可愛らしく思っていた。

 俺はボスの部屋へ行き、今聞いたばかりの情報を伝えた。
「私は何も聞いとらんな」というのがボスの答えだった。
 別に冷たい人間というわけではない。

 俺はボスがそうやって常に、ものの順序を尊ぶところを、常々、尊敬していた。

「さっそく、行ってこようと思うんですが」
「どこへだ?」
「巌流さんが入院したという病院へですよ」
 少々、いらついた。
 ボスは財布を開き、何枚かの札を取り出して俺に差し出した。
「思ったより入っていてよかった」と、真顔で呟いた。
 つまりは、出張の稟議など諮っていては時間がかかるということを、ボスも重々判っていたのだ。

 俺はそのまま(まるでその足で。そうすることがクールだと思ったのだ!)会社を出て、札幌駅から空港行きの快速電車に乗った。

 逆向きになるだろうに、映子は羽田空港で待っていてくれた。
 俺は非常に腹が減っていたが、それを言うと、映子に怖い目で睨まれた。
「まずはガンさんのところへ急ぎましょう!」

 俺らは京浜急行に乗り込んだ。
 ガンさんが入院しているのは、千葉県の某病院だった。
 千葉のその駅までは遠かった。
 映子が予めルートを計算してくれていたので、それでも最速で着いた。
「病院は、駅から徒歩三分です」と映子は言った。「高木さん、さっきはごめんなさい」
「何が?」
「えっと……あたし、おなかがすいちゃいました」
 俺らは駅から一番近い回転寿司の店に入り、手っ取り早く詰め込んだ。
 映子がヒラメのエンガワとか、ハマチとか、俺があまり好まないネタをたくさん食べるので、その話題(というかむしろ軽い口論)になった。
 そういえば、おでんの場合も、映子はチクワブなど、俺には理解できないネタが好きなのを思い出した。

(あれ? 俺は何しに来たんだっけ!)

 ガンさんは、ウッディーな羽目板で囲われた、昭和風の個室で、ベッドに半身を起こしていた。
 両腕や、寝間着でよく見えない箇所から、いろんな管やコードが伸びていて、地味なデザインの機器に繋がれている。
「ガンさん! どうしたよ」と俺は聞いた。
「ふっふふ。まるでルーターだろ?」
 ガンさんは、そのギャグがよほど気に入っていたらしく、言う相手を求めているのが丸わかりだった。
 俺と映子は、ミネラルウォーターや、当たり障りのなさそうな果物などを少しだけ見舞いの品として携えていたが、ガンさんはそれを一瞥すると、
「エーコ、頼んでいいか?」と言った。
「はい」
「あのさ……俺、コーラが飲みてえんだ」
「あ、気がつかなくてごめんなさい」と映子は一度言ったが、「でも、もしかしてコーラなんて、禁止じゃないんですか?」
 俺もそう思った。
 なにせ、全身に管と電線を点けられた、青ざめた男だ。
「禁止なんかじゃねえよ。ただ、駅前まで行かないと売ってないんだ」
 ガンさんは俺と映子のどちらへともなく、
「その戸棚の、一番上のひきだしを開けてくれ」と言った。
 俺の方が近かったので開けると、札や小銭が雑然と散らばっていた。
「お金なんて、いいです!」と、映子は向こう気のような口調でそう言うと、病室を飛び出していった。

「高木よ。こんどはおめえに頼みがあんだけどさ」
「何ですか」
「まずそこの、エーコが開けっ放しにしてったドアを閉めてくれ」
 俺は言われたとおりにした。
 何か、秘密の話でもあるのかと思った。
「ガンさん……結局どういう病気なのさ」
「なあに……通勤途中で車運転してたら、急に目の前が薄暗〜くなってよ、胸は苦しいし、必死で車を路肩に停めてさ……」
 ガンさんはその頃、左ハンドルのBMW3シリーズの何かに乗っていた。
「で?」
「覚えてねえんだよ」
 それ以上詳しくは聞けなかったが、心臓の病であることは判った。
「高木、煙草出せ」
「出すのはいいけど、まさか」
「いいから出せ」
 俺は言われた通りにした。
 俺はその頃、マイルドセブンライトを吸っていた。
「やわなの吸ってんな」とガンさん。「俺の口にくわえさせろ」
「それはまずいんじゃね?」
「いいから言われた通りにしろ」
 俺は言われた通りにした。
 そこからは、言いなりにさせられた。
 ガンさんは、
「おし。次はライターを出せ」と、煙草をくわえた口で言った。
 俺がそうすると、
「貧乏くせえライター使ってんな」と言った。
 次に言うことは想像がついたので、俺は言われる前にそうした。
 つまり、ガンさんの煙草の先に火を点けた。
 そのうえ、ガンさんが一服するたびに、俺の手で煙草をつまんで唇から離してやった。
「ああ……うめえなあ」とガンさんは言った。「そこにコップがあるだろ?」
 ガンさんの個室には、小さなキッチンがついていて、ぐい飲みみたいな湯飲みがあった。
「水を入れて……ああ、しゃべるのがめんどくせえ」
 俺はぐい飲みで即席の灰皿を作ってガンさんの腹の上あたりに置き、自分でも一服つけた。
「煙草、うまいね」と俺が言うと、ガンさんは目を細めた。

 映子がコーラをぎっしり詰め込んだコンビニの袋を持って戻ってきたのがその時。
「あんたら何してんの!」
 映子はコーラを袋ごと床に投げつけると、俺に向かってきた。
 とがった拳でみぞおちを突かれ、つけ爪つきの平手で顔を張られ、とがった靴の先で脛を蹴られた。
 言うまでもなく、標的になったのは俺だけだった。
 映子はわんわん泣き出しながら、まだ暴力を続け、俺はなんとかそれをかわすのに精一杯。
 ガンさんは、楽しい芝居でも観るように、ニコニコ笑っている。

(つづく)

このブログ風読み物はフィクションです。
実在の人物・団体・商品・店名などとは関係なく、
ストーリーも全て架空のものです。

posted by TAKAGISM at 15:42| Comment(0) | 雑感

2009年06月15日

四季荘の思い出

 引っ越しをすることになった。

 今度は都下ではなく、23区内だ(横浜でないのは悔しい!)。

 賑やかな吉祥寺に較べると、繁華街がまるでない区になる。

 ランチやらお茶やらで忙しい妻も退屈することだろうと思い、徒歩で行けるであろう散歩コースをあれこれと妄想してみる。

 谷中・根津・千駄木……いわゆる谷根千は趣がある土地だ。

 あるいは後楽園……ホールで一緒にボクシングのタイトルマッチを観たことはあるが、遊園地へは連れて行ってない。

 西に目を転じてみて、椿山荘が目に付いた。

「フォー・シーズンズ・ホテル」

 あれはまだ紅円が小さく、ニコが赤ん坊だった頃、ハワイ島へ旅したのを思い出した。

 

 ドライブと雑貨のショッピングにも飽きが来た頃、ルアウ・ショーが観たいということになった。

 滞在していたコンドミニアムにはコンシェルジュなどいなかったので、有名ホテルならばということで、こともあろうにフォー・シーズンズ・ホテルに電話をした。

 たどたどしい英語で、

「私は、ショー付きの食事を予約したいのです」と言うと、

「たいしたショーじゃないですよ」と答える。

 謙遜かと思い、

「《ルアウ》じゃないのですか?」

「ルアウ? ルアウですと?」

 なんだか噛み合わないやりとりの後に、人数分の予約をした。

 その夕方、不思議に濃い霧の中を、ホテルに向かった。

 茶色い制服を着た門衛がいる番所でバンを停める。

「どういった御用ですか?」

「ショーを観るためです」

「ショー? ショーがあったかな……」

「つまり、ディナーです」

「なるほど、ディナーですな。どうぞ、いい夕食を楽しんで下さい」

 というわけで通された。

 車寄せでは、バレットというのかバレーというのか、運転手が飛んできて、キーとチップを渡す方式。

「ご予約を確認します。お席にご案内するまで、ロビーでお過ごし下さい」

 そう言われて通されたロビーの、すごいこと……。

 波打ち際もほど近く、風が吹き抜ける軒の低いその一角には、従業員を含めて人の姿は無く、ニセモノではなさそうなタペストリーや壺が飾られている。

 テーブルの上の灰皿まで、美術品めいている。

「盗られないのか?」と心配するのが貧乏性である。

 とにかく、後にも先にも、あんなに素晴らしい空間は見たことがない。

「どんな人が泊まるんだろうな」

 目を丸くしているうちに、マネージャーらしき人が現れた。

「屋内の、つまり、メインダイニングのディナーを予約されましたか?」

「えーと、つまり、私たちはショーが見たいのでして」

「ああ、それなら」と彼はウインクしながらピンと指を立てて見せた。「おそらくオープンエアーのデッキですね」と、我々を案内してくれた。

 霧はすっかり晴れていた。

 波打ち際に、京都は鴨川の《床》のようなものが広々と作られており、ゆったりと間を開けてテーブルが配されている。

 今にして思えば、メインダイニングの重厚な食事に飽きた人が、カジュアルに夕食を楽しむための、半屋外レストランだったのだろう。

(調べれば判ることだろうが、あえて記憶に頼って書くから楽しいのだ)

 食事は、肉も魚も多彩に揃っていた。

 ウエイターが流暢に本日のお勧めを口上する。

「お子様けに、スパイシーじゃないミールも用意できますのでどうぞ」とのこと。「大人の方々は、まずカクテルなどいかがですか?」

 そういう意味では、僕以外はみな子供だ。

 何とか料理を注文し終わり、

「ところで、ショーは?」

「日が暮れてからです。今はほら、夕日をお楽しみ下さい」

 なるほど絶好のロケーションだった。

 水平線に、線香花火の玉みたいな太陽が、落ちこぼれようとしている。

 周囲にお客は少なかったのだが、どことなく気品あるその場の雰囲気に飲まれ、とてもじゃないがカメラを取り出す気分にはなれなかった。

 料理の味はあまり記憶にない。

 まずかったというわけではなく、やはり飲まれていたのだろう。

 太陽の、最後の一片が水平線の向う側に吸い込まれると、オレンジ色と紫色に染め分けられていた空は、たちまちブルーブラックのインクを流したようになる。

 それまでそんなものがあるとは気付かなかった三叉の鉄棒の上に載せられた松明に火が灯され、砂浜と泡立つ渚が炎に浮かび上がる。

 スチールギターとウクレレを抱えた楽士と歌手が静かに現れ、ハワイアンの甘いメロディーが奏でられる。

 豊かでしなやかな体つきの女性ダンサーたちが登場し、ゆったりとフラを踊る。

 ふと気付くと、年配の白人夫妻を中心として、客が増えていた。

 曲が終わっても、口笛を吹く人はいない。

 女性のものらしい、軽い拍手が起こるだけ。

 ショーはまるで上品な雰囲気の中、終わった。

「これはルアウというやつではないな」ということだけは、判った。

 僕らは皿を食い散らかし、ほとんど満腹だった。

「こういうところでは、甘い物で締めくくらないとカッコがつかないな」と呟いていると、ウエイターがやってきた。

「お食事は、ご満足いただけましたか? キッズも? さて、当店自慢のデザートを今から5種類申し上げます」と、立て板に水で、まくしたてる。

 ひとしきり、皆の意見をとりまとめる。

「その、チョコレートなんとかとストレートの温かい紅茶を、私の妻に。こちらの老婦人、そう、私の法的な母には、マンゴーのシャーベットと、こちらの若い婦人、私の法的妹には、クレムブリュレを。そして、それぞれにコーヒーを。および、僕にはリンゴのブランデーとダブルのエスプレッソを下さい。どうぞ」

「お子様には?」

「それはまあ、ほれ、えっと」

「ああ。ご婦人達のを分けてもらえばいいですもんね」

「そうです」

 古川さんや手島さんがわけもなくやってのけるひとコマを演じるのにも精一杯だ。

 ジョークを出す余裕も知恵もない。

 デザートは素晴らしかったと記憶している。

 勘定は覚えていないが、大人4人と幼児と乳児で、300ドル程度だったか。

 チップは25%と、頭の中でしきりに計算していた記憶ばかりがある。

 バレーで車を持ってきてくれたのは、先のと違うボーイだった。

 2ドル渡す。

 何とも気疲れのするディナーだったが、ホテルの印象は最高だった。

「あそこに泊まれるようにならなきゃね。がんばって」と妻に言われるが、すぐに返事が出来なかったのは、飲み過ぎたせいばかりではない。

 後で値段を調べて、「こりゃ普通人にはムリだ!」と思った。

 一泊二泊するホテルじゃない。

 ワン・シーズンを、チップの額の計算などで肝を冷やさずに過ごせる人向けだ。

 

 コンドーまでの帰り道、学生時代にやったアルバイトを思い出した。

「俺は、フォー・シーズンズで一働きしたことがあったのを思い出したよ」

「え、何?」

「目白の椿山荘だ」

 それは僕が大学2年生の夏。

 アルバイトをしていた六本木のラテン・パブ「万華鏡」が潰れ、まだ間もない頃だった。

 店に入っていたバンドの、ベースのジュンさんからある日連絡が来た。

「ハリー、7月の○日ってヒマ?」

「ええ、何もないと思いますけど、何ですか」

「結婚式の、司会をやってくんない?」

「ええ?」

「おまえ、ペシャリ、うまいじゃん」

 ジュンさんのバンド仲間で、僕は会ったことのない、ギタリストのKさんが、結婚するのだと言う。

「四十のおっさんでさ、奥さんはまだ若いの。オマエとかわんないくらいの歳でさ。で、おめでたなんだよ」

「でも、司会なんて、プロがやることじゃないんすか」

「まー、会場がチンザンソウとかリキ入れちゃったもんで、予算がショートしてんじゃないのか。ははは」

「チンザンソウって?」

「あ〜、知らない? 目白のねえ、オマエの学校のそばだよ。だれかに聞け。まあとにかく、○日な」

 いくつか条件を出された。

 披露宴は正午からだが、人数調整のため式にも参列して欲しいこと。

 打ち合わせは披露宴の直前に行う。

 スーツだけは着てこい。

 それだけだった。

 当日、指定された時刻に椿山荘に着くために、目白からタクシーを使ってしまった。

 手持ちで足りるかどうかとハラハラしたのを覚えている。

 Kさんは、鼻の下にヒゲを蓄えた人の良さそうな男で、新婦は若くて綺麗だった。

 たしかに僕と同じ年頃に見えた。

 両家の親族から、

「今日はなにとぞよろしく」と、丁寧に挨拶された。

 ジュンさんは、僕の背中を叩いてニヤニヤしている。

 初対面の二人の結婚式に出席し、厳かな気分と、これからやってくる重責に押しつぶされそうになる気分が、マーブル模様に混じり合った。

 神妙な顔で誓いの言葉を言ったばかりのKさんが、ジュンさんとやってきて、紙切れを押しつける。

「それが式次第だからね。だいたいのあんばいでやってよ。頼むね」とKさん。

「新郎新婦の名前だけは間違えんなよ」とジュンさん。

「そうだね。それ大事だね。あ、ちょっと貸して。ルビふっとくわ。アブネエアブネエ」とKさん。

 なんともアバウトな打ち合わせだった。

 披露宴の司会は、つつがなく済んだ、と思いたい。

 禁句に触れないようにするあまり、かなり口数の少ない司会だったろう。

 終わると同時に、体中に汗が吹き出してぐったりした。

 極度の緊張のさなかでは、脂汗は別としても、無駄な汗などかかないものなのだと知った。

 すでにかなり酔っぱらったジュンさんが、ぬるくなりかけたビール瓶を持ってやってきた。

「まあ、きゅーっとやりなよ。いや、なかなかの名司会。これで食えるんじゃねえ?」

「冗談きついすよ」

 ビールはうまかった。

 大きなゲップをした。

 控え室でチェーンスモーキングしながらぐったりしていると、お客さんを送り終えた新郎新婦とそのご両親達が現れた。

 煙草をもみ消して立ち上がり、緊張する。

「いやあ、本当に心のこもったいい司会でした」とKさんのお父さんが言う。

 これは、素人くさかったことへの、慰めとも取れる。

「ほんとほんと。頼んでよかったよ。これもジュンちゃんのおかげだよ」とKさんが言う。

「あれでよかったですか?」

「よかったよかった。いい思い出になったよ」

 すると、新婦が半歩前に出て、

「あたしのこと、覚えてない?」と言う。

「え?」

「あたしは1年で中退しちゃったし、タカギ君あんまり学校に来なかったもんね」

 聞けば同じ学部の同学年ではないか。

 ジュンさんが、ニヤニヤしながら見ている。

 言われてみると、覚えがあった。

 茶色がかった目と、長くてカールした茶色い髪。

 学生生協の書店の棚の前でぶつかったこともある。

 それを言うと、

「そうそう。覚えててくれたのね」

「いやあ、とにかくおめでとう」

 彼女が手袋の手を差し伸べてくれたので、軽く握った。

 結婚式の花嫁の手を握るとはいいものだと思った。

 美しい幸福を、分けて貰える気がする。

「これから、着替えて二次会なんで、もう行かなくっちゃ。二次会も、時間さえあるなら是非、出てくれよ」とKさん。

 一行は行ってしまったが、Kさんのお父さんだけが戻ってきた。

「今日のお礼でございます」と、引き出物の袋を渡してくれた。「それと、これ。些少ですが」と、ご祝儀袋をくれた。

 後で見ると、五万円入っていた。

 会場付きのプロを雇えただろう金額だ。

 

「で、その引き出物は、君も知ってるはずだ」

 僕はバンのハンドルを握りながら、斜め後ろの席の妻に言った。

「何だったの?」

「冴えない緑色の石でできた花瓶。君にあげただろ?」

「え? あのヘンな花瓶?」

「ヘンとは失礼な。よろこんで使ってたじゃないか」

「あなたあれ、私の誕生日プレゼントにって、くれたんだよ!」

 とんだヤブヘビだった……。

 

 で、ルアウはというと、よく調べると、我々が滞在していたコンドミニアムに一番近いホテル――シェラトンだかヒルトンだかで、ディナー付き、完全予約制で開催されていると判った。

 翌日の夕食は、そこで摂った。

 大人が一人98ドルで子供が58ドルだったか。

 チップを含めると500ドル以上にはなった。

 フォー・シーズンズのデッキでのディナーとどちらが良かったかと言われれば、これは絶対、フォー・シーズンズである。

 
posted by TAKAGISM at 04:21| Comment(20) | 雑感

2008年12月26日

次郎のこと

 この歳になると、スポーツはもとより、世の中を見回しても、誰も彼もが自分より若い。
 清原だ桑田だと言って、彼らの生き様や逸話に涙しても、俺より二つも若い。
 これは言っても仕方ないことで、むしろ、どれだけ若い人と付き合うかってことだと思う。
 無理して若ぶってもしょうがないし、威張って見せてもどうしようもない。
 十五年以上やっている本業の世界では、誰が上でも下でもなく、健全な仲間関係が出来ていて、お互いを尊重し合いながら、いいバランスが取れていると、俺は思う。
 が、次郎は別なのである。

 奴との出会いは、そう旧くもない。
 二〇〇六年の夏頃、何を思っていたのだか、俺自身すら判らない気分の中、赤坂に部屋を借りた。
 台所に生ゴミは溜めるまいという強迫観念にも似た思いから、俺は、街で飯を食っていたのだった。
 赤坂見附駅にほど近い鮨屋……週に三度は行っていたその店で、俺は次郎に会ったのだ。

posted by TAKAGISM at 05:07| Comment(2) | 雑感

2008年10月22日

夜の猫は……

 ……ともかくとして、
 僕の思いのままにならない猫は――ニコだ。

 本人いわく、
「天使のふりしてるやつね」の写真だそうだ。

 頭に縄を載せているだけなんだけど。

 ケータイから出てきたので。

2004_0727_101238AA.JPG
posted by TAKAGISM at 01:44| Comment(8) | 雑感

2008年06月26日

告白

 ひさびさにオリジナル実家書斎で何か読み物はないかと探していると、ラクロの『危険な関係』が出てきた。
 最近、小説もハードカバーでよく読むし、佐藤優氏のインテリジェンス(教養、知識ではなくて、諜報活動のほう)の本も読むし、週刊誌も読むのだが、どれもすいーっと読めてしまうので、一日3冊とかになってしまい、それぞれ面白いんだけど、間が持たない。
 そこに『リエゾン・ダンジュルーズ』を見つけたので、これはいいかなと。
 昨日は『マノン・レスコー』(ぼろっぼろの岩波文庫)を三分の一くらい読んじゃったし。
 で、そんな時に長島縦とチャットしていて、
「この表紙の、そそる女優は誰だっけか」
「ミシェル・ファイファーだろ」
 そっか。
 で、いつものごとく、
「この夜に美女がいる限り、もう少し生きていたいよな」という話になった。
 お互い、もう、なんもかもめんどくさかったのだ。
 それでいろいろ話すうち、美女話になり、ようつべで、
 ナスターシャ・キンスキーをめっけて、

 http://jp.youtube.com/watch?v=Tiki0fhs3Uw

「うお〜、やっぱこれだよな」
「俺、泣く」
「こっちもすごいよな」

 http://jp.youtube.com/watch?v=Dt42lwoHp9U&feature=related

 とか言っていたのだが、そういえば、17歳のころの理想の美女を思い出した。
 ようつべには、なんでもあるな。
「アンジェラだよ」
「アンジェラ?」
 アンジェラ・ハリーという美女がいて、しびれたもんだった。
 たとえば、これ……


 ま、当時は僕の美神でしたね。
 大通りのパルコのエレベーター嬢で、
 そっくりの人がいた。
 リブロならぬ冨貴堂書店には毎日通っていたが、
 エスカレーターは使わなかった。

 そして、小林麻美……。


 ってことになり、縦は甲田益也子さんを出してくるし。

 美女に疲れたので、ボブ・マーリーのライブなんかで男らしい世界をさまよううち、
 ケイト・ブッシュに行き着き、『バブーシュカ』のインタービューなどを見るうち、
 なんだかんだで朝になっちまった。

 http://jp.youtube.com/watch?v=uS_s_SR7hxo&feature=related

 こんなのを見て、大人になって有名な会社に入れば、
 社員食堂で、こういうこともあるのかなと思ってました。

 アンジェラ……カリフォルニアにいるらしい。
 若い頃と別の美女になってるようです。

 おじさんですから、何でも言ってください。
 80年代……。
posted by TAKAGISM at 04:38| Comment(2) | 雑感

発掘

 20年ぶりくらいに卒業アルバムを見た。
 懐かしいなあ。

 ジャズ研だよ……。
 勝井も蛸山も芋田も長島縦もいる。

highscool002.jpg
posted by TAKAGISM at 03:38| Comment(4) | 雑感

2008年06月11日

まじやべ、がに漬け、うまい!

 先日、自室で原稿をいじっているとき、何か外のポストに異音を感じたような気がした。
 新聞や郵便物以外に、毎日大量に入るチラシのたぐい……人によってはたしかに、夜中に入れて回る者もいる。
 なのでさほど気にしなかったのだが、未明、とっくにマナーにしておいたケータイメールを見ると、友人の編集者K氏から、
「先日、帰郷しました。おみやげをポストに入れましたので、ご賞味あれ。ですが、お口に合うかどうかはわかりません」とのこと。
 ポストにはたしかに、持ち重りのする包みが。
 あやしい褐色のペーストが詰まった「真かに漬け」と、これはさわやかそうな「ゆず胡椒」である。

 かに漬け……そういえばたしかKさん、故郷の珍味で「がに漬け」というのがあると仰っていた。
 故郷は、佐賀である。
 発音は絶対に「ガニ漬け」だったのだが、パッケージは「真かに漬け」……いや、よくある。
 北海道でも、あきらかに《ケガニ》なものを、リムジンバスなんかのゆるいパンフレットには、
「ゆでたて、毛かに」とか書いてあるし。
 ガニ……って音がイメージ悪いとでも思っているのかな。
 だいたい、ケガニの場合は《毛》だけですごいんだからさ。

 小さめのナメタケの瓶のような、大きめの塩ウニのような瓶を空けると、プラスチックの中ぶたがあり、こいつをめくると、ほんわり磯の香り。
 香りは、いわゆる「かにみそ」だ。
 ティースプーンを出して、少し掬って、舐めてみる。

 う〜、うまい!!

 かにみその濃厚な香りに、明らかに殻ごと叩いたジャリジャリ感、加えて、かなりの塩度。
 わかりやすくたとえれば、いわゆるかにみそ(生とか茹でたてではなく瓶詰めのやつ)に、アンチョビのしょっぱさとコクを加え、しかし脂はゼロといったところか。
 続けて舐めるが、辛口の清酒か白いご飯が欲しくなる。
 さじの先に取ったひとかけで、この威力。
 瓶一本ともなれば、どれだけのパワーが秘められているというのだ!!

 瓶詰めの場合、塩辛でもいくらでも、口を付けたさじをふたたび瓶に入れることはしない。
 腐敗が怖いからだ。
 それゆえ、取り出しさじ、取り皿、舐めるためのさじ……という手はずになる。
 ワンセットを自室に用意し、本体瓶は冷蔵した。
 これはやばいぞ。
 おそるべし、ガニ漬け!
 使い道に困るぞ、ガニ!!

 清酒をぶら下げて来る人がいたら、小皿にわけてあげるので、いっしょに賞味しましょう。
 深夜、『プリズン・ブレイク シーズンU』などを見ながら、日本酒とガニ漬け……至福ですな。

 Kさんありがとう。
posted by TAKAGISM at 18:28| Comment(2) | 雑感

2008年06月06日

万進法を進めよう

 札幌での話だが、産廃業者の梁川ことヤンさんと鮨屋で話してて、
「万進法がいい」と俺が言うと、ヤンさんは、
「それ何?」と言う。
 俺は手近な紙に、書いてみせた。

──10,000-

「ヤンさん、これはいくら?」
「答えるのもあほくさい」
「だよね? じゃあ、これは?」

──100,000,000-

「ん? 百万……じゃないや、1千万?」
「ちゃんと数えてよ」
「んと……、あ、1億か。で?」
「おかしいでしょ、このカンマ」
「何が?」
「オーベーか、ペシっ!、でしょ、これ」
「何が?」
 板前さんは判っていて、笑っている。
「欧米ではほれ、1,000が単位だから、1マンを表すのに、テン・サウザンズって言うでしょ?」
「そだけど、なにか?」
「1億ってのは、マンかけるマンだから、ジャパンではカンマ2つでいいわけですよ」
「あ!」
 ヤンさんも気づいたようだ。

「で、ヤンさん、これは?」

──1,0000,0000-

「そっか! なるほど、一億だね」
「ですよね。マンのマンでもいいんですよ」
「ふむ」
「じゃ、これは?」

──100,0000,0000-

「う〜ん」
「最初に100があってカンマで区切られて、マンのマンですよ?」
「あ、百億か」
「ですです。じゃ、これは?」

──1,0000,0000,0000-

「判るけどさ、関係ないよ」
「そう言わずにさ。億の1万倍だよ」
「うるさいなあ。1兆かい」
「そういうことになるでしょ?」
「はいはい。なるほどね」

 兆は、オーベー風にカンマを打つと、

──1,000,000,000,000-

 英語でなんと読むかは知らない。

「で、1兆なんて、キミに何の関係があるわけ?」と、言われてしまった。
posted by TAKAGISM at 21:14| Comment(5) | 雑感

2008年05月29日

ぶろぐ

 貧乏学生の自炊レシピみたいなネタ以外は、
 しばらくお休みさせてもらいます。

 ではでは!
posted by TAKAGISM at 05:26| Comment(2) | 雑感

2008年04月09日

初登校

 紅円の初登校の日だ。
「一人で行ける」とは言うものの、
 早朝の電車がどんな具合か一度見てみようと思い、早起きする。
 計算では、7:15発の電車に乗ることができれば、指定された登校時間にちょうどいい。

 娘の通う学校では、コートは色指定があるだけでなく、指定業者のものでなくてはいけないそうだ。
 カーディガンは、色と形の要件を満たしていればいいとのこと。
 だが、
「きっと誰も着てこないと思う。今日は校庭で全校生徒が集まるんだけど、校長様がいらっしゃる時には制服だけだそうらしいから」
 しかし、北海道生まれ育ちのくせに、カーディガンを着ていても「寒い」と身をすくめている。

 娘はレディース車両の列に並び、俺は隣の車両を待つ。
 予定より2本早い電車に乗ることになった。
 ホームに立っていると、紅円と同じ制服を着ているが、かなり背の高い落ち着いた感じの女の子がやってきた。
 これは先輩か、と思い、紅円に合図を送ったが、気づかない模様。
 だが、やはりレディース車両に乗るかと思われたその子は、どういうわけか、俺と同じ列に並んだ。
 混んではいるが、9時前後の猛烈な満員ではない。
 大人しい人たちが、小さく畳んだ新聞に目を落としているか、目をつぶって瞑目している。

「隣の車両からなら様子が見えるんじゃない?」などと言った妻の言葉は机上の空論で、隣の車両どころか、どこに誰がいるかなんて、判りはしない。
 先刻の女の子は、手にした日本史風の資料に目を落としているが、足元のバッグが人波に揉まれるので、引き寄せるのに大変そうだ。
 ある駅で、バッグが大人たちのすねに挟まれてしまった。
 一生懸命身を屈めて、手許にたぐり寄せている。
 娘と同じ制服を着ている子ゆえ、他人事とも思われず、
「大丈夫かい? 手伝おうか?」と声をかける。
「大丈夫です。ありがとうございます」
 朝の電車で会話を交わす人はいないので、いくつかの怪訝な視線を受ける。

 大きな駅で車内が少し空いた。
 先ほどの子が、
「さっきは、ありがとうございました」と言う。
「二年生ですか?」と訊いた。
「いいえ、一年生です。今日が初登校なので」
 これは驚いた。
 ずいぶんしっかりしている。
「そうなんだ? 実は僕の娘も一年生でね、隣の車両に乗ってるんだ」
「私も、女性専用に乗ろうと思ったんですけれど、混んでいたから」
「かえってそうかもしれないね」
「娘さん、何組ですか? 私はX組です」
 ここではっきり「いろはに」で答えるべきところ、なんだか間違って、
「1組……いや、1じゃないや」と戸惑ってしまった。
 嘘つきかと疑われるのを避けるべく、昨日覚えたX組の先生の名前を出し、
「あ、じゃあ、XX先生だね?」
「はい」
「あなたは、在校生組?」
「いいえ。受験で入りました」
 それにしては、実に落ち着いている。

 あっという間に、学園のある駅に着いた。
 隣の車両から降りてきた紅円と、そのしっかりした彼女を引き合わせる。
 互いに名乗り合い、並んでホームを歩いていく。
 何の心配もない。

 はじめ、地下鉄に乗り継いで赤坂見附の事務所に行こうと思っていたが、地下鉄もまた混んでいるだろうと思い直し、表を歩いて行こうと決めた。
 改札へ続く階段を上ると、娘の通う学園を含め、女子中高生の群衆……そして、きっちりした身なりのビジネスマンおよびウーマン。
 不思議な駅だ。
 それはそうだ──入試も合格発表も入学式も1学年だけだが、ぜんぶでその6倍の生徒がいるわけだから。
 娘はもう心配なかったので、
「じゃあな」と言い残し、逆方向へ歩く。
 昨日の嵐はどこへやら、うららかな日である。

posted by TAKAGISM at 23:59| Comment(0) | 雑感

2008年04月08日

入学式

 夜半からの激しい嵐は衰えを見せず、横殴りの雨が降っている。

 そんな中、長女・紅円の入学式があった。
 札幌から来ている両親とは受付時刻に学園の入り口で待ち合わせたが、駅までの道のりがいつも通りでなかったためと、鉄道ダイヤの乱れで少し遅くなる。

 会場は千人弱が収まりそうなホールである。
 斜面に取り付けられた椅子に父兄が座り、前方のスペースが空いていて、クラス別に着席することになっている。
 クラスは「い」「ろ」「は」「に」に別れているというのも、伝統を感じさせる。
 やがて後方二カ所の入り口から二列を成した生徒達が、階段を下り前方の席に導かれていく。
 女の子しかいないのが不思議な感じで、改めてそこが女子校であることに気づく。

 シスター姿の校長(生徒達は校長様と呼ぶそうだ)の式辞は、格調高く明晰で、何か映画のワンシーンを見ているようだった。
 続いて理事長の挨拶。
 4つのクラスの担任教授が紹介され、シンプルな式は終わった。
 生徒が退出した後、父兄に向けてのオリエンテーションがしばらく続く。
 来年100週年を迎えるという名門には、独自の伝統と方法論があるのだろう。
 北海道の田舎で学齢期を経た身にしてみれば、驚くことばかりだ。
 また、生徒の安全のための決まり事やルールも多い。
 ──セキュリティに関することなので詳しくは書かないが。

 重い教科書類(すでに受け取っていた分の残り半分)を受け取り、両親を伴って先に帰る。
 妻は紅円が教室から戻ってくるのを、ホールで待つ。
posted by TAKAGISM at 23:59| Comment(1) | 雑感

2008年03月19日

卒業式

 紅円の卒業式に行ってきた。
 ついこないだ入学式だと思ったのに。
 月日の巡りは速いものよ。

_DSC3550.jpg

posted by TAKAGISM at 13:22| Comment(9) | 雑感

久しぶりの札幌

 昨日、札幌に戻ってきた。
 2/29以来なので、3週間ぶりと言える。
 今回は、札幌漫画研究会のイベントに加え、長女紅円の卒業式がある。

 11時に都内の家を出て、空港着が12時頃。
 カツサンドとアイスコーヒーの昼食を摂って、機内に乗り込んだ。
 シーズン的にも曜日的にも谷間なんだろうか、ロビーも機内も空いている。
 帰省とも違うし、出張帰りとも違う、不思議な感じだ。

 ここのところ、本を読んでいない。
 雑誌も、ざっと目を通すだけだ。
 そんなわけで読み物もなく席に着き、とろとろした。

 見下ろす北海道は、予想していたほど白くなくて、春の訪れが早いのを感じた。
 千歳の気温は8度ほどか。
 スーツの上に薄いコートで、寒くない。
 路面が乾いているので、空港リムジンは1時間で着くと確信した。
 その通りになった。

 本宅着が16時……つまり、ドアツードアで5時間ということだ。

 久々の自室は、特に違和感もなく馴染めた。
 MacBookさえ広げれることができれば、そこが私の居場所になるのだ。

 紅円の卒業アルバムと通知表を見る。
 今回転校する人たち向けに、クラス全員からの肉筆の手紙を綴じた、立派な文集が作られたそうだ。
 先生の手間を思うと、大変なことだと思う。

 女の子達はみな達筆で、書いている内容も大人だ。
 もうすでに、女性として完成形に近い(これは妻の意見)。
 幼稚園の時から知っている子も多いが、みんな、こんなにも成長したんだな。

 男の子達が凄い。
 文字には幼さが残るが、言葉遣いやユーモアが見事なものだ。
 それぞれに人柄が表れている。

「なんで彼らはこんなにジェントルなんだ?」と妻に言うと、
「そうだよ。どこの家も、しっかりしてるし、みんなちゃんとした子なんだから」

 彼らの文脈から類推するに、紅円はずいぶん「優等生」らしく敬意を払われていたのだと見て取れた。
 文章とアルバムの写真を照らし合わせながら、しばし熟読した。
 自分の12歳と思い合わせ、今の少年達はずいぶん優しく礼儀正しいことだと思った。

 母に夕食を頼んでおいた。

・うどの酢味噌和え
・うどの皮のきんぴら
・イカ刺し
・煮魚(黒ガレイ)
・春巻
・鶏唐揚げ
・混ぜご飯

 など、注文しておいた通りの、和風メニューだった。
 素朴な献立だが、心づくしで、美味だった。
 やがて仕事帰りの妹もやってきて、7人で食卓を囲んだ。

 久しぶりに会ったニコは照れているようだった。
 あまりかまって嫌われるのは得策ではないと考え、放っておいた。
 すると、新しく買ったというブライスの写真集を手に、近づいてきた。
 いろんな作家たちがそれぞれ、衣装やメイクに趣向を凝らした素晴らしいものだ。
 居間のソファで二人、それをゆっくりめくった。
posted by TAKAGISM at 01:51| Comment(5) | 雑感

2008年03月14日

ワル・スーツ

 こないだの休みの日、B嬢と街を歩いていると、昔から好きだった某イタリヤ系ブランドの路面店があったので、吸い込まれた。
 ジャケットと、白いシャツ(デザインと生地違いの)を2枚と、スリムなデニムを衝動的に買ってしまった。
 それはそれで、春の準備ということで良かったのだが、また服を買ってしまった。
 クローゼットがスカスカなので、そういうことになるのだ。

 まず、古着のセレクトショップで、よさげな服を2着買った。

 その後、連れのA嬢にそそのかされ、ちょっと覗くつもりの某店で、スーツを買ってしまった。
 ロンドン系のブランドだが、バーバリーの真面目君とは真逆の、ワルなやつだ。

 靴とベルトとシャツとタイも買った。
 靴は、先が尖ってるイマ風なのは初めて履くので、なんだか落ち着かない気分。
 パンツも初めてのシェイプだし。

 でも、ワル服は落ち着く〜。

(4月のパーティーで着用予定)

 あと、湯沸かしポットも買った。
 これで、部屋にいながらにしてコーヒーも漢方薬も飲める。

 自室用のお掃除グッズも買った。
posted by TAKAGISM at 01:30| Comment(2) | 雑感